親の土地に家を建てたら・・・
今までのブログでは「遺言書を書いた方がいいですよ」とお伝えしてきました。
今回は、相続では決して珍しくない、実際に起こり得るケースをご紹介します。
「親の土地に家を建てているけど、家は自分名義だし、ローンも自分が払っているから大丈夫」
そう思っている方は意外と多いのですが、
実はこのケース、遺言書がないと大きなトラブルになりやすい典型例です。
ケースの概要
- 土地:父親名義
- 家(建物):長男名義
- 長男が住宅ローンを支払いながら、父親と同居。母親は既に亡くなっている。
- 別居の兄弟(二男・三男)がいる
一見すると問題なさそうですが、父親が亡くなった瞬間、状況は一気に変わります。
■ 親が亡くなると、土地は「相続財産」になる
家は長男名義なので長男のものですが、土地は父親の相続財産のままです。
父親が遺言書を残していない場合、兄弟3人全員に1/3ずつ相続権があります。
そのため、兄弟は
- 「土地の価値を3人で分けるべき」
- 「長男だけがタダで土地を使い続けるのは不公平」
と主張することができます。
これは法律上、まったく正当な主張です。
■ 2人の弟は“共有したい”のではなく、“現金で清算したい”
相続で土地を共有にすると、
- 売却に全員の同意が必要
- 将来の管理が面倒
- 固定資産税の負担が不明確
など、トラブルの素になります。
そのため、兄弟の多くは最初から
「共有ではなく、売却して現金で分けたい」
と要望します。
このケースでもまさにその流れになりました。
■ 家と土地をまとめて売却し、お金を分けることに
土地は3人で相続する必要がありますが、建物(家)は長男の資産です。
そのため、売却代金は次のように分かれます。
- 建物部分(長男名義の家):長男が100%受け取る
- 土地部分(親名義の相続財産):兄弟3人で1/3ずつ
しかし、土地だけ売却することは現実的ではありません。
土地と家はセットでひとつの不動産として売却されるため、
家+土地をまとめて売却し、
売却代金を“家の分は長男へ、土地の分は3人で分配”する
という形になりました。
結果として、長男は住んでいた家を失い、さらに 住めなくなった家の住宅ローンだけが残る
という苦しい状況に陥ってしまったのです。
これは決して珍しいことではありません。
■ なぜこんなことが起きるのか?
- 土地が親名義のまま
- 親が遺言書を残していない
- 兄弟が「公平」を求める
- 法定相続分に従うと、土地は3人で1/3ずつ
- 共有を避けるため売却 → 現金で分ける流れになる
こうした背景が重なると、今回のようなトラブルが起きやすいのです。
行政書士としてお伝えしたいこと
争族になってしまうと、行政書士ではなく弁護士の仕事に
相続が感情的にこじれて「争族」になると、
- 相続人同士の交渉
- 対立した当事者の代理
- 調停・訴訟対応
などはすべて 弁護士の業務 になります。
行政書士は、争いになってしまった後には介入できません。
だからこそ、争族になる前の“予防”がとても大切です。
遺言書があれば防げた可能性が高い
今回のケースも、父親が元気なうちに、
- 土地を誰に相続させるのか
- なぜそのようにするのか(理由や背景)
を遺言書で明確にしていれば、兄弟間の対立は大幅に減っていたはずです。
遺言書は、家族を守るための最もシンプルで効果的な方法です。
まとめ
親名義の土地に家を建てること自体はよくあることです。
家を建てる前に兄弟の間で良く話し合い、名義を変更するなどしておけば良いのですが、
「家は長男が建てても、土地は自分の物だから、この家に住む権利はある」
と土地の名義は自分に残しておきたいという父親の心情も理解できます。
しかし、遺言書がない場合などは、今回のような相続トラブルに発展する可能性があります。
大切な家を守るためにも、そして家族の関係を守るためにも、
争族になる前に、早めに専門家へ相談しておくことをおすすめします。
岡部あき子(行政書士)
小江戸川越より、行政書士事務所開業準備中のあれこれをお届けしています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の相談に応じるものではありません。
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