前回の記事では「代襲相続」についてご紹介しました。
今回はその続編として、「兄弟姉妹が相続人になるケース」を取り上げます。

私自身もそうですが、近年では子どものいないご夫婦や独身の方が増えており、
「兄弟姉妹が相続人になる」ケースは決して珍しくありません。
身近な方にも当てはまることが多い相続のかたちです。

相続人の順位と、兄弟姉妹が相続人になる流れ

相続では、法律で相続人になる順番（法定相続順位）が決められています。

結婚している場合、配偶者は常に相続人になります。
そのうえで、配偶者と「誰が一緒に相続人になるか」は、亡くなった方に子どもや親がいるかどうかで変わります。

  1. 第1順位：子（直系卑属）
  2. 第2順位：父母などの直系尊属
  3. 第3順位：兄弟姉妹

ここで出てくる「直系卑属」「直系尊属」という言葉は、少し難しいですが次のような意味です。

  • 直系卑属（ちょっけいひぞく）：自分より下の世代（子・孫など）
  • 直系尊属（ちょっけいそんぞく）：自分より上の世代（父母・祖父母など）

つまり、子どもがいない場合は親が相続人、 そして親もすでに亡くなっている場合は兄弟姉妹が相続人になります。

相続人の優先順位にしたがって、誰が相続人になるかを見てみましょう。

【独身で子供がいない場合】

状況相続人相続分
父母が健在父と母父1/2、母1/2
父母のうち一方が死亡生存している親のみ全部
父母とも死亡・祖父母が健在祖父母生存している祖父母で均等
直系尊属（親・祖父母）が
全員死亡		兄弟姉妹兄弟姉妹で均等（代襲相続あり）

図で見る独身の場合の相続順位
🧍本人（独身）
↓（１）親がいれば親
↓（２）親も亡くなっていれば祖父母
↓（３）祖父母も亡くなっていれば兄弟姉妹（代襲相続の場合、甥・姪）

【配偶者ありで子供がいない場合】

配偶者は常に相続人になります。
子どもがいない場合は、配偶者と一緒に親や兄弟姉妹が相続人になります。

状況相続人相続分
父母が健在配偶者＋父母2/3 配偶者
父母1/3（父母で1/6ずつ）
父母とも死亡・祖父母が健在配偶者＋祖父母2/3 配偶者
1/3 を生存している祖父母で均等に分ける
直系尊属（親・祖父母）が
全員死亡		配偶者＋兄弟姉妹3/4 配偶者
1/4 を兄弟姉妹で均等に分ける
（代襲相続あり）

図で見る配偶者あり・子なしの場合の相続順位
👫本人（既婚・子供なし）＋配偶者
↓（１）親がいれば「配偶者＋親」
↓（２）親も亡くなっていれば「配偶者＋祖父母」
↓（３）祖父母も亡くなっていれば「配偶者＋兄弟姉妹（代襲相続の場合、甥・姪）」

兄弟姉妹の代襲相続（甥・姪が相続する場合）

もし、兄弟姉妹のうちすでに亡くなっている人がいる場合は、
その子ども（甥・姪）が代わりに相続します。
これを代襲相続といいます。

ただし、兄弟姉妹の場合の代襲は一代限りです。
甥・姪がすでに亡くなっていても、甥・姪の子（再代襲）は相続できません。

兄弟姉妹が相続人になる場合の注意点

兄弟姉妹が相続人になると、相続人の人数が多くなることがあります。
兄弟姉妹のうちすでに亡くなっている人がいる場合は、その子ども（甥・姪）が代襲相続人となり、
相続人が10人以上に増えてしまうこともあります。

このように相続人が増えると、遺産分割協議が長引いたり、
不動産の手続きが進まなくなってしまうことがあります。

トラブルを防ぐためにも、遺言書を作成しておくことが非常に大切です。

兄弟姉妹には「遺留分」がありません


兄弟姉妹が相続人となる場合、遺留分（最低限の取り分）は認められません。
遺言書で「兄には何も渡さない」と記載しても、
兄弟姉妹は「遺留分を侵害された」として請求することはできません。

この点については、別の記事で「なぜ兄弟姉妹には遺留分がないのか」を解説します。

まとめ

「自分には子どもがいない」「親もすでに亡くなっている」――
そんな方にとって、兄弟姉妹が相続人となるのはとても身近な問題です。
誰に、どのように財産を遺すのかを考え、早めに準備をしておきましょう。

行政書士は、遺言書の文案作成や相続関係説明図の作成など、 相続の初期手続きや事前準備をサポートしています。
不安や疑問がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

※本記事は、執筆時点の法令に基づき一般的な情報をまとめたものです。
相続登記など登記申請の代理は司法書士の業務となります。

岡部あき子（行政書士）
小江戸川越より、行政書士事務所開業準備中のあれこれをお届けしています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の相談に応じるものではありません。

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