遺言書を作成する際、
「自分の財産は、妻(夫)にすべて譲りたい」と考える方はとても多いです。
残される大切なご家族が、その後の生活に困らないようにするための、とても思いやりのある選択だと思います。
しかし、ここで一つ、想像してみていただきたいことがあります。
「もしも、財産を譲りたいと考えていた相手が、自分より先に、あるいは同時に亡くなってしまったら?」
考えたくないことかもしれませんが、事故や災害、急な病気など、人生には何が起こるか分かりません。
せっかく作成した遺言書も、財産を受け取るはずだった方が先に亡くなっていた場合、
その部分の遺言は効力を持たなくなってしまいます。
そうなると、最終的には相続人全員で遺産分割協議(話し合い)を行うことになり、
前回のブログでお話ししたような「共有」のトラブルにつながってしまう可能性もあります。
そんな「想定外の事態」を防ぐために役立つのが、今回ご紹介する「予備的遺言(よびてきゆいごん)」です。
1.予備的遺言とは?
予備的遺言とは、
「第一に財産を渡したい人が受け取れなかった場合に備えて、別の人をあらかじめ決めておく」ための書き方です。
遺言が「もしも」のための備えなら、
予備的遺言はいわば「もしも」のさらに「もしも」に備える遺言です。
2.具体的にはどう書くの?
書き方はとてもシンプルです。
「第一候補の人」のあとに「第二候補の人」を書き加えるだけです。
例えば、夫が「妻にすべて相続させる」という遺言を書きたい場合、予備的遺言を追加するとこのようになります。
- メインの遺言:
「全財産を、妻の〇〇に相続させる。」 - 予備的遺言:
「万が一、妻〇〇が遺言者より先に、または同時に死亡した場合は、
全財産を、甥の△△に遺贈する(または相続させる)。」
このように、「もし第一候補の人が受け取れなかった場合」の一文を付け加えることで、
遺産分割協議の手間を省き、ご自身の財産を確実に希望する相手へ引き継ぐことができます。
3.なぜ「予備的遺言」が必要なのか?
当事務所で遺言書の作成をサポートさせていただく際、
この「予備的遺言」は基本的にセットでご提案しています。
なぜなら、誰にとっても「想定外の事態」は起こり得るからです。
例えば、次のようなリスクは、遺言書を作成するすべての方に潜んでいます。
- 「同時死亡」のリスク
ご夫婦は一緒に行動する時間が長いため、交通事故や災害などで同時に亡くなってしまう可能性があります。
もし配偶者に全財産を譲る遺言を書いていても、その部分の遺言は効力を持たなくなってしまいます。 - 順番通りにいかないリスク
自分と同年代のご兄弟やご友人、あるいはご両親など年上の方に財産を譲りたい場合、
相手が自分より先に亡くなる可能性は十分に考えられます。 - 残された家族の手続きが複雑化するリスク
例えばお子様がいらっしゃらないご夫婦の場合、遺言が効力をもたなくなると、
配偶者側の親族とご自身の親族との間で一から遺産分割協議を行うことになり、
残された方に大きな負担をかけてしまいます。
このように、予備的遺言は特定の方だけのものではなく、
遺言書を作成するすべての方にとって重要な「備え」のひとつです。
4.まとめ
遺言書は、ご自身の想いを形にする大切なものです。
だからこそ、「もしも」のさらに先まで考えて準備をしておくことが、ご家族や大切な方への本当の“やさしさ”につながります。
当事務所では、それぞれのご家族の状況や想いに合わせた「オーダーメイドの遺言書」作成のお手伝いをしております。
「自分の場合は予備的遺言が必要かな?」と少しでも迷われたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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行政書士 岡部暁子
小江戸川越の「行政書士岡部あき子事務所」より、
暮らしに寄り添う相続・遺言コラムをお届けしています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事情に対する助言には該当しません。
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