親が認知症になってからでは遅い
親の老いは、ある日突然、現実として目の前にあらわれます。
「同じことを何度も繰り返す」「最近忘れっぽくなった」
…そう感じはじめても、毎日の生活の中でつい見過ごしがちです。
けれども、認知症に関してだけは、“気づいたときにはもう遅い”場合があります。
今回は、どこの家庭でも起こりうる
「母親に認知症の疑いがある家庭で起こりうる相続トラブル」
についてお話しします。
ケースの概要
- 家の名義:父親
- 住んでいる人:父と母
- 子ども:2人
- 母に認知症の疑いあり(まだ確定診断はなし)
- 父は今のところしっかりしている
この家庭で、一番大事なポイントは
✔ 家の名義は父、しかし認知症が疑われているのは母
というところです。
■ 問題は「父が遺言書を作らないまま亡くなった場合」
父親が遺言書を作らずに亡くなると、
相続手続きには 母も相続人として必ず関わる必要があります。
しかし母が認知症になっていると、
- 遺産分割の話し合いに参加できない
- 印鑑を押せない
- 内容を理解することが難しい
つまり、相続に必要な“意思表示”ができません。
するとどうなるかというと……
■ 母親に“成年後見人”をつける必要が出てくる
母には相続人としての権利があります。
しかしその権利を「自分で使えない」状態になると、
代わりに手続きをする人(成年後見人)を家庭裁判所が選ぶことになります。
成年後見制度自体は、判断能力が低下した方を守るためのとても大切な制度です。
詐欺や悪質商法から守ったり、財産をきちんと管理したり、多くのメリットがあります。
しかし――
“相続手続きのためだけに後見人が必要になる”
となると、家族の負担はかなり大きくなります。
■ 成年後見になると、家族の自由が効かなくなる
例えば、
- 銀行の出金
- 不動産の名義変更
- 預金の移動
- 相続の話し合い
こうした手続きは、すべて後見人の同意が必要になり、場合によっては家庭裁判所の許可も必要です。
特に家・土地などの不動産が関係するとやっかいです。
■ 家はどうなる?母は住み続けられる?
例えば、2人の子どもが家・土地を売却しようとしても、
✔ 母親には「配偶者居住権」という法律上の権利があります
これは、夫が亡くなったあとでも
「奥さんが自宅に住み続けられる権利」を守る制度です。
ただし、
- 登記が必要
- 評価が必要
- 相続人全員の調整が必要
など、実務上の手続きが思っている以上に複雑です。
もし母が認知症で後見人が必要なタイミングだと、
この手続き自体も 後見人+家庭裁判所の管理下 で行う必要があります。
■ では、どうすれば良いのか?
今回のケースでは、認知症が疑われている母よりも、父が元気な今が最大のチャンスです。
父がしておくべきことは、次の2つです。
①遺言書を作っておくこと
父が遺言書を残しておけば、相続は遺言書に沿って進められます。
つまり、
- 母が認知症で判断能力がなくても
- 遺言書があれば遺産分割協議が不要になり
- 成年後見人をつけずに済むケースが多くなる
これは家族にとって非常に大きなメリットです。
② 生前対策(家族信託など)を検討すること
今回は深く触れませんが、「家族信託」などの方法であれば、将来の不動産管理や売却がスムーズにできます。
これについては、別のブログで詳しく書きます。
まとめ
認知症は、気づいたときにはすでに進んでいることがあります。
そして認知症になってしまうと、自分自身では相続の手続きができなくなります。
もちろん、成年後見制度を利用すれば、後見人が代わりに相続の手続きをすることはできます。
しかし、後見制度を利用するためには、家庭裁判所への申立てや調査、選任までの時間が必要で、
その後の財産管理にも厳しい制限がかかります。
そのため、「相続のためだけに後見人をつける」という状況は、ご家族にとって大きな負担になることがあります。
だからこそ、父親が元気な今こそ重要なタイミングです。
- 父の遺言書
- 必要に応じた生前対策(家族信託など)
これらがあるだけで、母の成年後見が必要になる状況を避けられる可能性がぐっと高まります。
家族の将来を守るためにも、
「まだ大丈夫」ではなく「今だからこそできる準備」を進めていただきたいと思います。
遺言書や生前対策は、
「やらなきゃいけないのは分かっているけど、どこから手をつければいいのか分からない」
という方が本当に多いです。
行政書士は、
・遺言書の作成サポート
・財産の整理(財産目録の作成)
・生前対策に関するご相談
・公正証書遺言の手続きサポート
などを行っています。
ご家族の状況をお聞きしながら、最適な方法をご提案しますので、
「うちもそろそろ考えないと…」と感じた方は、どうぞお気軽にご相談ください。
岡部あき子(行政書士)
小江戸川越より、行政書士事務所開業準備中のあれこれをお届けしています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の相談に応じるものではありません。
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