― 現行制度をもとに遺言・相続との関係を解説 ―
今までこのブログでは、遺言や相続の話題を中心に書いてきました。
しかし、遺言・相続と成年後見制度は密接に関係しており、
どちらか一方だけでは十分な支援にならないケースも少なくありません。
そのため私は、行政書士川越支部の相続部会に加え、後見部会にも所属しています。
今回から数回に分けて、成年後見制度について、基本的な仕組みから順にお伝えしていきたいと思います。
第1回は、「成年後見制度とは?」です。
※2026年1月現在、成年後見制度は今後の見直しが検討されています。
本記事は現行制度(2026年段階)を前提に解説しています。
制度の改正時期や内容は今後決まっていく可能性があるため、最新情報に基づき追記・更新していきます。
成年後見制度とは
成年後見制度とは、
認知症・知的障がい・精神障がいなどにより、判断能力が不十分になった方を支援する制度です。
判断能力が低下すると、
- 介護施設の利用契約
- 医療費や施設費用の支払い
- 預貯金の管理
- 不動産の売却などの契約
といったことを、自分ひとりで行うことが難しくなる場合があります。
現行の成年後見制度はこのような仕組みで、本人の意思を尊重しながら支援する制度です。
なお、制度は見直しの検討が進められており、支援の範囲や運用の柔軟性が今後変わる可能性があります。
成年後見制度の2つの種類
成年後見制度には、大きく分けて次の2つがあります。
任意後見制度
任意後見制度は、判断能力が十分にあるうちに、
将来に備えて支援してもらう人をあらかじめ決めておく制度です。
任意後見制度を利用する場合は、任意後見契約を公正証書で作成します。
将来、判断能力が低下したときに、
家庭裁判所で任意後見監督人が選任されることで、
任意後見契約の内容に基づいた支援が始まります。
この制度の特徴は、
自分の将来について、本人が主体的に内容を決めておける点にあります。
法定後見制度
法定後見制度は、
すでに判断能力が低下している場合に利用される制度です。
家庭裁判所が、本人の状況に応じて
適切な援助者(補助人・保佐人・後見人のいずれか)を選任します。
選ばれた援助者が、本人の意思を尊重しながら、
本人に代わって、契約などの法律行為や財産管理など必要な支援をします。
成年後見制度と遺言・相続の関係
成年後見制度は「生きている間の支援」を目的とした制度です。
一方で、遺言や相続は、亡くなった後の財産の話になります。
ここで、とても大切な点があります。
法定後見制度が開始した後は、
原則として遺言書を作成することはできません。
法定後見制度は、
判断能力が不十分な状態にあることを前提として開始されるため、
遺言書を作成するために必要な「遺言能力(事理弁識能力)」が認められないのが通常です。
さらに注意したいのが、相続人側の判断能力の問題です。
遺産分割協議は、相続人全員の意思表示がそろって初めて成立します。
そのため、相続人の中に認知症などで判断能力が低下している方がいる場合、
その方は遺産分割協議に参加できません。
このような場合、通常は成年後見人を家庭裁判所に選任して、
その人に代わり協議に参加してもらう必要があります。
そのため、遺言や相続についての備えは、
判断能力が十分にあるうちに考えておくことが重要になります。
これらの問題について、以前ブログで書いていますので、参考にしてください
相続人が認知症になる前に 遺言書がないと困ること その2
自分・親が認知症になる前に 遺言書がないと困ること その3
成年後見制度は「万能」ではありません
成年後見制度は、判断能力が低下した方を守るための、非常に重要な制度です。
一方で、
- 家庭裁判所の関与がある
- 原則として途中でやめることができない
- 継続的な報告や費用が発生する
といった特徴もあります。
そのため、制度の内容を正しく理解したうえで、
その方の状況に合っているかどうかを考えることが大切です。
まとめと次回予告
成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度があり、
それぞれ役割や使うタイミングが異なります。
遺言や相続とあわせて考えることで、
判断能力が十分にあるうちに、より本人らしい備えをすることが可能になります。
次回は、
「補助・保佐・後見の違い」について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
※本記事の成年後見制度の概要については、
公益社団法人コスモス成年後見サポートセンターのパンフレットを参考にしています。
補足:成年後見制度見直しの動きについて(2026年1月時点)
成年後見制度については、支援内容・期間・運用の柔軟性を高める見直しの検討が進んでいます。
例えば以下のような方向性が議論されています:
- 一度始めた後見制度を必要がなくなった時点で終了できる柔軟な仕組みへの転換が検討されていること。
- 目的や期間を限定した代理権の設定など、より本人の意思に沿った運用が可能になる可能性があること。
ただし、現時点では改正法の成立・施行日・具体的な内容は未確定です。
そのため本記事の解説は、あくまで現行制度に基づく説明となっています。
施行後は制度内容が変わる可能性があるため、必要に応じて情報を更新していきます。
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行政書士 岡部暁子
小江戸川越の「行政書士岡部あき子事務所」より、
暮らしに寄り添う相続・遺言コラムをお届けしています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事情に対する助言には該当しません。
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