亡くなった方の戸籍を何通も集めて提出する――
相続手続きでよくある「戸除籍謄本等の束」を提出する手間を、まとめてくれる制度があります。
それが「法定相続情報証明制度(法廷相続情報一覧図)」です。
※遺産分割協議書とは別の制度です。
法定相続情報一覧図とは?
被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸除籍一式を法務局に提出し、
法務局が「相続関係をまとめた一覧図」を作成・認証してくれる制度です。
相続人が多くて、複数の金融機関を回る予定の方は特に便利です。
この一覧図の写しは、
銀行や保険会社、証券会社、郵便局などで戸籍の代わりとして提出できるため、
何度も同じ戸籍をコピーして提出する必要がなくなります。
制度の運用開始は2017年。現在では相続の現場で広く使われています。
どんなときに使える?
- 預貯金の相続手続き(銀行・信用金庫・ゆうちょ銀行など)
- 証券会社での名義変更・株式の相続手続き
- 生命保険・年金・社会保険等の請求・名義変更手続き
- 自動車や有価証券の名義変更手続き
- 相続人代表者による各種手続き
- 相続税申告の補助資料として使われることもある
複数の金融機関や機関で手続きを行う場合ほど、
戸籍を何通も用意する手間と時間を大きく減らすことができます。
一覧図を使うメリット
- 戸籍謄本(戸除籍)の束を何度も出さずにすむ
- 写しは無料で交付/何通でも取得可能
- 相続人の証明が法務局認証で安定・確実
- 手続きがスムーズになり、相続人の負担・ストレス軽減
注意点・使えない場合・併用すべき制度
- 一覧図は「誰が法定相続人か」を証明するだけ。 “誰がどの財産を相続するか”は示されない。
→ 不動産の相続登記や財産の分配を伴う手続きでは、
別途遺産分割協議書または遺言書が必要になる場合があります。 - 相続人に外国籍の方がいたり、戸籍で相続関係を証明しづらいケースでは、
上手く使えない可能性があります。 - 申請できる法務局は、被相続人の本籍地・被相続人の最後の住所地・申出人の住所地・被相続人名義の不動産所在地のいずれかに限られます。
行政書士も代理申請できる
この制度の申出は、相続人本人だけでなく、代理人による申請も認められています。
行政書士であれば、
- 戸籍収集
- 一覧図の作成
- 法務局への申請(申出)
- 一覧図の写しの受領
などを代行可能です。
ただし、不動産の名義変更(相続登記)については、
別途司法書士の業務となるため、必要に応じて司法書士と連携します。
公式サイト・申請の詳細はこちら
法定相続情報証明制度の詳しい内容や申請書様式などは、
下記の法務局公式ページをご参照ください:
まとめ
法定相続情報一覧図は、
相続人の戸籍を何度もコピー・提出する手間から解放され、
複数の金融機関や機関での相続手続きをスムーズにしてくれる、とても便利な制度です。
ただし、財産の分け方や不動産の名義変更といった手続きでは、
遺産分割協議書や遺言書が必要になる可能性があるので注意が必要です
行政書士 岡部暁子
小江戸川越の「行政書士岡部あき子事務所」より、
暮らしに寄り添う相続・遺言コラムをお届けしています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事情に対する助言には該当しません。
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